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かなりタイトルにつられた感は強い本でした。
というのも、いつも最終的には経営というより仕事の判断そのものが
つまるところ「好き嫌い」なんじゃないかなと思ってたからです。

【柳井正さんとの対談】

単に好き嫌いでビジネスはやるべきじゃない。
でも根底に好き嫌いがないとビジネスにならない。
僕の言う好き嫌いは「何のためにやっているのか」

「経営は矛盾の克服」〜人にさせながら、全部自分でやる〜
自分がコミットメントして、自分がハンズオンでないと人は絶対に動かない
でも、自分が1から10までやっていたら、人はイヤになる。

経営者というのは主体的に経営する自分がいて(好き嫌い)、
その自分を客観的に見る「もう1人の自分」がいないとうまくいかないもの、

という記述が一番印象に残りました。

当たり前ですが、好き嫌いは必要だけど、それだけではダメ。両面必要ということ。

【重松理さんとの対談】

担当がいないのが経営者、でも「これが何よりも好き」はある。
マクドナルド創業者のレイ・クロックにとっては店舗開発と不動産。
重松さんにとっては「商品開発」
ものづくり、もの選びでこれは見たことないだろうみたいな商品を世の中に送り出すこと。

【大前研一さんとの対談】

「自分だったら何か貢献できるかもしれない」と思うような仕事しか請けないのがポリシー。
コンサルタントの本質は、寝ても覚めてもその会社のことを考えること。
社長よりもその会社のことを考えないと、いい答えなんて出てこない。


位置エネルギー(名誉・名声とかそこにいること自体がその人にとって価値があること)ではなく
運動エネルギー(自分自身が仕事をし、どういう貢献ができるか)を求める。


位置エネルギーと運動エネルギーの対比は日常に照らし合わせると「あるある」。
位置エネルギーだけ高い人にはなりたくないな、と思います。

【まとめ】

企業は世の中全体から見れば局所化されたローカルな存在。
企業の価値観は、「言論の自由」「人間は平等だ」という普遍的な価値観や良し悪し
と同じものではない、好き嫌いの度合いが濃いものであるはず。

ミッション、ビジョン、バリューはそれが企業固有のものだからわざわざ言語化するのであり、
社会一般の規範や通念を並べたものではあまり意味がない。

確かに、なんのためにつくるのかといえば、他者との違い、特徴を出すためであり
どこでも同じような言語ではそもそもの意味がありません。

あと、プロセスとしてたくさんの人と議論して決めるのは良いけど、最終的には
1人の主観(≒好き嫌い)で決まるべきものだと思います。
皆で最大公約数にしていくと、結局まるまるとした一般用語になってしまうので。

ポジショニング戦略でいう「ターゲット顧客」と同じぐらい「ターゲット社員」が重要。
「うちの会社でターゲットとするべき社員とはどんな人なのか」=採用。

採用も結局のところ「好き嫌い」の要素は大きいと思います。特に新卒は。

長期利益への構えで企業を大別すると
「オポチュニティ(機会)企業」と「クオリティ(質)企業」
の2つに分かれる。

日本の企業に大切なのは外部環境の収益機会を捉えることより、企業内部で独自の価値をつくること。
クオリティ企業はコンセプト勝負。言い換えれば本質的な顧客への価値提供の定義。
これこそが経営者の仕事。

経営はインセンティブでどうにかなるほど安直な仕事ではない。
大切なのは動因(ドライブ)であり、その奥底にはその人の好き嫌いとしたいいようのないものが
広がっている。

クオリティ企業として、或いはベンチャーであればあるほど、好き嫌いの要素は
大きくなると思いますし、そうでなければ組織が動かないと思います。

組織内の判断は大きくなるほど「良し悪し」になりがち、
でも、結局のところ客観性100%はあり得ないので、優先順位や強みを慎重に勘案し、
ここぞ、というところは「好き嫌い」で判断する、
そんなバランスを大切にした経営をしていきたいです。