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イギリス人から見た、日本の「おもてなし」に対する疑問にはじまり、
主観のようでいて統計データを基にした提言は新鮮でした。

日本がアピールしがちな「おもてなし」「治安」「交通の正確さ」に
対して、「USA Today」で掲載された日本の5つの魅力は

①歴史的名所 ②京都の寺社 ③伝統体験(旅館・お茶・相撲)
④食事 ⑤自然(スキー・沖縄・富士山)

ただし、アジアの場合は④とショッピングになるなど、当然ながら
国によって評価ポイントは変わってきます。

インバウンド対策で、つい外国人と一括りにしてしまいがちですが、
同じアジアでも日本、中国、韓国で嗜好性や経済感覚で大きな違いが
あるので、一国ごとに、丁寧に分析をする必要があることを改めて
感じました。

自分たちもこれから一番考えなければならない予測が訪日外国人数だと
思います。

2014年に約1,300万人を超え、2020年には2,000万人、2030年には3,000万人
とも言われてますが、これが多いのか少ないのか?

本書の中では一貫して日本の観光ポテンシャルの高さを踏まえ5,600万人から
8,000万人を目指すべきと指摘されています。

【計算根拠①】

世界の観光産業がGDPに占める割合:9%
日本のGDP約460兆円×9%≒41兆円
41兆円÷20万円(1人あたり航空券以外の支出)≒2.07億人
2.07億人×21%(外国人の貢献比率)≒4,300万人 

2014年の1,300万人に4,300万人を足すと5,600万人

【計算根拠②】

先進国の観光収入平均はGDPの1.8%
日本のGDP約460兆円×1.8%≒817.6億ドル
817.6億ドル÷1人あたり観光支出1,461ドル≒5,600万人

ちなみに2014年のスペインが6,066万人(世界3位)、中国が5,569万人(世界4位)
実際に5,600万人くるとしたら世界の五本指に入る感じ。

ただし、観光客数と自国の人口比でいくと平均が26.3%。
(ちなみに1位のフランスは128.2%、スペインが130.6%)
日本の人口が12,691万人なので26.3%だと3,337万人。

データで見る限りは、 明らかに2,000万人、3,000万人のレベルでは
低すぎると言えます。

訪日外国人の国別ランキングを見ると
①台湾(283万人)②韓国(275万人)③中国(240万人)④香港(92万人)
⑤アメリカ(89万人)⑥タイ(65万人)⑦オーストラリア(30万人)

アジア上位5ヵ国で訪日外国人全体の71.4%、

2003年に521万人だった訪日外国人数が2014年に1,341万人まで増えた
その内訳はアジア全体が89.1%。
つまり先進国(欧米)が増えていないことになります。

一方で観光支出ランキングを見ると
①オーストラリア(1,223ドル)②ドイツ(1,063ドル)③カナダ(1,002ドル)
④イギリス(821ドル)⑤フランス(665ドル)⑥イタリア(452ドル)
⑦ロシア(374ドル)⑧ アメリカ(273ドル)⑨ブラジル(127ドル)⑩中国(94ドル)

お金を落とすヨーロッパ諸国から来てもらうことが、日本の観光収入を
あげることにつながることが、このデータの限りだと言えそうです。

アジアにおいて、中国に次ぐ訪問観光客数が多いタイ(2,655万人 ※日本は9位)
ロシア、イギリス、オーストラリア、アメリカ、ドイツ、フランス、スウェーデン
の順でアメリカを除き日本の何倍もの観光客獲得に成功しています。

食事、文化、自然、気候の面から見ても、日本が見習う一つのモデル
だと思います。

要は、まだまだ日本にできることはありそうですし、他業種に比べて
マーケティングが未成熟であることは理解できました。

インバウンド戦略としての訪日外国人客と合わせて、各地方都市における
国内外の観光客獲得も同様のプロセスが必要だと思います。

①どこの国(県)の
②どういう人に
③何人くらい
④いつ何を見せて
⑤何日滞在してもらい
⑥観光サービスにいくら払ってもらうのか
⑦そのために何をどう発信すれば来てもらえるのか

デービッド・アトキンソン 新・観光立国論
デービッド アトキンソン
東洋経済新報社
2015-06-05